比較文化的に外国のお料理を考えるとき、まず注目すべきはなんでしょうか。その土地で取れる食材、歴史的背景のあるレシピ・・・いえ、まずは調理器具、とくに加熱方法の違いだと思う。
オーブンあるからこそ鴨も丸焼きできるというものです。ダックリング(duckling, 若い鴨)をドイツ風にローストしました。こういうお料理はでかいオーブンが普及してない日本だと家庭料理として定着するのは難しいだろうなあ。
ドテラが誕生日にはグース(ガチョウ)をローストして食べたいとか言ってたのですが、ガチョウって大きいんですよね。10-12パウンド(5-6キロ)を丸焼きしちゃうと、いくら大食らいでも40超した二人暮らしだとキツい。その点、鴨だと4-5パウンドくらい、2キロ前後です。骨、内臓コミの重量だし、まあおいしく食べれる範疇です。
よし、丸焼きする前にブラインしよう。
ブライン
肉を塩水につけて加水、味付けする方法です。詳しくは過去記事:ターキーを焼こう!解凍・ブライン編にネッチリ書き込んでます。
鴨は脂肪が厚いのでジューシーさは充分なはずですが、それでも赤肉部分は火加減や焼き時間がうまい按配でなければパサつきます。また、鴨はにおいも味も強いので、あらかじめスパイスやハーブなどで風味をつけておくのは有効な方法です。
私は4リットルの水に塩を150gほど溶かし、そこに砂糖100g、オレンジの輪切り、シナモン、クローブ、ジュニパーベリー、ローリエの葉、粒コショウを入れてブライン液としました。ダックを丸ごとこの液に漬け、丸一日冷蔵庫に入れておきます。
ダックの中には、首骨と可食の内臓が入っています。首骨は湯がいたあとで重めの包丁でたたき、水と香味野菜(玉ねぎ、セロリ、にんじんなど)で炊いてスープを取っておきます。内臓は、今回私はしょうゆと砂糖で甘辛に炒め煮して酒の肴にしてしまいました。
脂肪で死亡
さて、いよいよお料理ですが、ダックってすごい脂肪なんですよ。このままオーブンに入れたりしたらコップに2-3杯の油が流れ出てきます。それは料理中の段階で取り除けるのですが、皮も皮で持て余すほど脂っこいので調理前にできるだけ余分な皮を取り除いておいた方がいいんじゃないかなぁ。。。若い人ならどうかな。
キッチンばさみで首まわり、尻まわりの余分な皮を取り除くとやや300gになりました。うわあ。
これはのちほど厚手のフライパンなんかでカリッとくるまでゆっくり過熱してやりましょう。かなりの量のダックファットが取れます。出てきた油はガラス容器などに移し、冷蔵庫に入れておくときれいに白く固まります。非常に風味のよい油なので、毎日のお料理を底支えしてくれることでしょう。チャーハン、焼きそばなど炒め系は言うに及ばず、ジャガイモや野菜のローストなどとてもおいしくできます。
でもそれってコレステロールすごいんじゃないの・・・とか思ってちょっと検索してみたら、ダックファットは体にいいという記事がいくつも見つかって逆にビックリしました。その内容の大部分は一価不飽和脂肪で悪玉コレステロールを減らす働きがあるそうな。(Duck Fat and Cholesterol:livestrong.com) 検索してみるもんだなあ。
つけあわせ
これはドイツ人のドテラの強い要望なのですが、ダックやグースなどの脂肪の強い食鳥のローストの場合、赤キャベツを付け合わせに使います。そしてジャガイモはクヌーデルとかクネーデルとかいう例のアレです。
赤・・・だと?
これをザワークラウトの赤いやつだと思ったら大間違い。もうすんごい大間違い。だってこれ甘いんですもの。
ザワークラウトはキャベツを塩漬けして発酵させたもので、すっぱくてシャキシャキしんなりといった質感ですが、一方この赤キャベツは漬物ではなく砂糖と酢で調理したものです。砂糖甘くて、煮過ぎたキャベツのように柔らかい・・・いや実際加熱して柔らかくしてあるんだろうけども。最初食べたときは「なにをどう間違ってこんなものが生まれたんや」と思ったものですが、脂っこくて野性味の強い肉にこの甘さが合・・・わないこともないかなあ?好きな人もいるかもなあこれ?みたいな感じです。それでもヨーロッパ系食材店とかでなく普通のスーパーでも売ってるから広い需要があるんでしょうなあ(まだ得心いってない)。
瓶詰のものを買ってきた場合、そのまま温まるだけで食べる人も多いのですが、ベーコンやりんご、スパイスなどで調味するレシピも多くあります。私はダックから落ちてきた油をおおさじ1-2杯使って炒め煮にしました。ドテラはうまいうまいと言っていたのでそういうものらしいです(まだ得心いってない)(また言っちゃった)。
クネーデルはダックの焼きあがる時間にちょうど良いように、箱に書いてある手順通りに用意します。
いよいよ焼くぜ!
ダック本体はブライン液から取り出し、キッチンペーパーなどで全体の水分をぬぐいます。胸を上にして焼き皿に載せ、あちこちフォークや鋭いナイフなどで刺しておきましょう。油がよく流れ出てきます。
腹の中にスライスしたオレンジやリンゴを数枚入れておくと、果物の香りが肉に移ります。脂っこさの中にもフルーティな甘やかさ。
オーブンを400度(摂氏200度)に予熱し、まず15分焼きます。これは高温でまず表面をパリッとさせるためです。15分後に320度(摂氏160度)に下げて90分ほど焼きます。
焼いている途中、放っておくと焼き皿にくっついてしまうことがありますので、30分間隔くらいでチェックして動かしてあげてください。また、たくさん油が出てくると思うので、それも途中で取り除きます。
最初あんなにたくさん皮を取っておいたのに、それでもカップ一杯くらいは油が取れました。
焼き時間は5-6パウンドくらいの大きさで2時間前後が目安ですが、オーブンの癖やダック本体の大きさ、肉の厚みなどでけっこう変わってきます。温度計でモモ部分を骨に近いところまで刺して測り、175度(摂氏80度)に達しているか確認してください。
仕上げるよ!
ダックは焼き皿から取り出し、予熱を入れつつできるだけ冷めないようにおいておきます。
焼き皿にはダックから流れ落ちた焼き汁が煮詰まっています。これはとてもうま味の濃い部分なので、ぜひともグレイビーを作る下地にしたい。
荒焦げしてないといいけど。
まず焼き皿に、全体に行き渡るくらいの量の白ワインを注ぎます。直火にかけられる皿の場合は弱火に、そうでない場合はオーブンに入れて5分ほど熱します。木べらで底をこすり、焼き汁をワインに溶かして落とします。このとき、みじん切りのにんにくやシャロットなどを加えると風味がグンと増します。
これを小鍋に移し、首骨で取ったスープを加えて煮立てます(首骨でスープを取ったりするのが手間に感じるならチキンスープの素などを使ってください)。量はカップ一杯くらい。塩、少量の砂糖、おなじく少量の醤油、ウスタシャーソースなどで味付けします。好みでシェリー酒なんかをちょっぴり使うのもいいでしょう。味が整ったら茶こしなどで濾しましょう。
再度火にかけ、水溶き片栗粉やコンスターチでとろみをつけます。
おいしいグレイビーできたよ!
焼いてる最中に流れ出た油を取っておけば、このグレイビーが分離することはまずないと思います。
さて、ダックは表面が触れるくらいに冷めてきたころかと思います。盛りつけますよ!
まずは腿と手羽を胴から外します。
皮に切れ目を入れ、関節を自然に曲がるのとは逆の方向にボキンと折ると、外れた骨が見えると思います。そこをねらって細いナイフなどで切り離します。
さて一番おいしいところ!胸肉を外しますよ。
胸の真ん中を走っている骨の両側にまっすぐナイフを走らせ、肋骨に沿って肉をそぐように切り落とします。そして胸一枚をまな板に持ってきて、食べやすい大きさに切ります。
ああ・・・美しい。つやつや輝く皮からはちょうどよく油が流れ落ちていて、見るからにげんなりするような脂っこさからみごとな昇華を遂げている。この香ばしさ、つややかさに頬ずりしたい。
一人分にモモ一本と胸一枚あれば十分すぎる量。
そろそろ赤ワイン開けるよー。私は料理しながらすでに飲んでたけどー。
いただきまーす!
いやーこのグレイビーの美しいこと、見てください。化学調味料が後ろも見ずに走って逃げそうなくらいのうまみの濃さです。これ炊き立てご飯にかけて食べるだけでもイケる。
でも味が濃いと言えば肉です。ダックと言えば胸肉はですけど、赤い色の濃いモモ肉の力強さったらないわ。鮭トバかってくらい噛みしめてしまう。
ターキーやチキンのローストを作ったことのある方なら、ダックもグースも基本の手順はほぼ同じなことがお分かりだと思います。丸焼きなんて・・・という逡巡は一回やっちゃえばなんてことないのがわかるはず。迷っている方はぜひ試してほしいです。
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こんばんは!!
とってもおいしそうで見ていてお腹が空きました~(午前0時32分)
札幌だと鴨を丸のまま手に入れるのがなかなか難しいです。
滝川の合鴨でないかと軽く探しましたが見つからず…
やはり通販に頼るしかなさそうです。
手には入った際はぜひチャレンジしたいなぁ。
ビビちゃんブログも拝見してますが、こちらの更新も楽しみです。
コメントありがとうございます。
ひょっとしたら地元の肉屋とかで扱っているところもあるかもしれないけど、ほとんどは卸でしょうなあ。なかなか日本の食卓に普及しない食材ですよね。
こんばんは。クリスマスにチャレンジしたのですが、ものすごい油で・・・先にお尻頭の油を切り取り、などイロイロ参考になりました!
コメントありがとうございます。
そう!油がものすごいですよね。