クッキー・・・食べる対象としても作る対象としても、これほどピンからキリまで幅が広いものは類がないでしょう。
今回は簡単で作りやすく失敗しにくく、焼いた後も壊れにくく持ち運びや保存に気を使わなくてもオッケーなお気軽かつ王道のチョコチップクッキーです。
クッキーとアメリカ
アメリカではクッキーはただうまいから食べるというだけのものではなく、社会的にも家庭的にも重要なアイテムだったりします。
特に良妻賢母の絶対的なシンボルでもあり、Presidential Bake-Offと言われている大統領選キャンペーン中の候補の奥さん同士のクッキーレシピ対決は毎回注目されますよね(ちなみに2012年ではミシェル・オバマが三種類のチョコチップを使ったチョコチップクッキーのレシピで、アン・ロムニーのM and M’s クッキーに僅差で勝利しています。こちらの記事にレシピも載っています)。これは料理上手はどっちだとかいう問題ではなくむしろ候補者のイメージアピール運動の一環ですが、クッキーつくりがその切り口になっているということから、アメリカ人にとってクッキーがただのオヤツ以上のものであることがうかがえます。
余談ですが、実はこのクッキー対決はそれほど長い歴史のあるイベントではなく、1992年のヒラリー・クリントンvsバーバラ・ブッシュが第一回なんですって。この選挙後にヒラリーが「わたしは家庭でクッキーを焼いて満足しているような女性ではありません」とか「わたしは家庭にいてクッキーを焼くような女性にはなりたくない」とか言ったと報道されたのもまた注目を浴びましたが、この発言の原文は “I suppose I could have stayed home and baked cookies and had teas, but what I decided to do was to fulfill my profession which I entered before my husband was in public life(家庭にとどまりクッキーを焼きお茶を楽しむということもできただろうが、私には夫が政界に入る以前からのキャリアがありそれを遂行することを選んだのです)” というもので、上の日本語訳などは読んだ人の印象を大きく左右する意図のある悪訳の例として後世に伝え残したいです。まあ日本語訳だけの問題でなく、アメリカでもすでに曲解と言っていいレベルで報道されてたからしょうがないけど。
クッキー、レシピいろいろ
クッキーは初心者さんでも気軽に作れるもっとも簡単な焼き菓子ではありますが、それは簡単に作れる種類のクッキーもあるというだけのことで、当然ですが相応に高い技術と充分な経験がなければうまく作れない繊細かつ美しいクッキーも多くあります。種類が多く作り方も材料の配合もさまざまで、食感(サクサク、カリカリ、シットリ、ボリボリなど)、食べ応え(重さ・軽さ)、固さ、形状、保存性なども千差万別で思ったとおりに作ろうと思うと難しく、そこがまたおもしろいですね。
クッキーの主材料は砂糖、バター、小麦粉、卵です。油脂(バター、卵黄)の比率が高くなるとサクサクした軽い歯ごたえになり風味も増しますが、壊れやすくもろくなるので持ち運びに注意が必要になります。卵は卵黄が油脂、卵白が水分&たんぱく質なので、サクサクしたリッチなクッキーになると卵をまったく使わなかったり、卵黄のみしか使わなかったりします。しぼり出しクッキーやバニラ・キップフェールとかですね。
一般に、型で抜いたり冷蔵庫で冷やし固めてから切って成型するクッキー(アイスボックスクッキー)は、砂糖:バター:小麦粉の割合が1:2:3(プラス卵使用)だとおいしくできる黄金比であると言われています。このとき、バターの比率は大体全体の30%程度になるものが多いです。しぼり出しクッキーならこの割合が1:2:2(バター比率40%)とか1:3:3(バター比率約43%)とかで、卵は使用しないもしくは卵黄だけを使うことが多いようです。そして砂糖:バター:小麦粉:卵の割合が各同量ずつになると、クッキーではなくパウンドケーキのレシピになります。
今回のレシピではチョコチップをタップリ使うのでバター比率は低めにし、砂糖:バター:小麦粉の割合がだいたい1:2:4プラス全卵を使用します。質感はカッチリ&サックリ、持ち運んでも壊れにくく扱いやすくなっています。というのもこれは例のTake a Piece!に使うからです。ウフフフ。
材料
バター 110g (アメリカなら 1 stick)
砂糖 50g
小麦粉 200g
卵 1個
バニラエッセンス 少々
ベーキングパウダー こさじ1
チョコチップ 140g
作り方
1)バターを室温でやわらかくしておきます。
2)小麦粉とベーキングパウダーを合わせて振るっておきます。
3)バターをボウルに入れ、泡だて器でかき混ぜながら砂糖を数回に分けて加えます。
白っぽくフカフカふんわりするように泡立てつつ混ぜましょう。
4)卵を器に溶いて、3)のボウルに少しずつ加え、都度よく混ぜます。
卵を全部加えたらバニラエッセンスも入れましょう。分離しちゃっても気にしない。あとで粉がドッサリ入るから平気平気。
5) 4)のボウルに2)を加え、ヘラでサックリ混ぜます。粉類は2,3回に分けて入れていくとラクです。
6) 5)にチョコチップを入れます。もうこの段階では手を使うのが一番かも。
ひとまとまりにしてラップで包み、冷蔵庫に30分から1時間ほど入れて休ませましょう。パンとかパイ生地ではないから、時間がなかったら生地を休ませずにすぐ焼いてもまあ大丈夫。
7) オーブンを華氏340度(摂氏170度)に予熱します。
8)冷蔵庫から生地を出し、大さじ1くらいを手で平たく丸めて天板に並べます。
そんな焼き広がる生地じゃないので、2センチも間を空けておけば充分。
9)オーブンの上段で13-15分ほど焼きます!
狐色に焼くよりは、焼き色はほとんどつかないくらいのほうがこのクッキーは美しいかと思います。この辺はお好みで。
10) 焼けたら網の上に移動させ、すっかり冷ましたら缶などに入れて保存します。
しかしクッキーやいてるときのいい匂い、ほんとに幸せな匂いだと思う。アメリカに限らず、家でクッキーを焼く人がいるというのが幸せな家庭の象徴なのは理解できるわ。フェミニストの視点からはあれこれあるんだろうけど。
そしてこのクッキーは色違いで焼くのも楽しいですよ!
材料
バター 110g (アメリカなら 1 stick)
砂糖 50g
小麦粉 170g
無糖カカオパウダー 30g
卵 1個
インスタントコーヒー小さじ1をお湯大さじ1で溶いたもの
ベーキングパウダー こさじ1
ホワイトチョコチップ 140g
上記の作り方と大体同じです。
2)で、小麦粉、ココアパウダー、ベーキングパウダーを混ぜることと、バニラエッセンスの変わりにコーヒーを使うこと、チョコチップはホワイトチョコを使うことだけが違います。
なんの変哲もないフツーのクッキーですが、簡単で失敗しにくく、出来上がった後も扱いやすく、どんなところに持って行っても嫌われない便利で気軽なクッキーです。レシピに書くほどのものでもなかったのですが、よければお試しください。
そしてこのレシピは英語でも書いてます。Cook Like Japanese: Chocolate Chip Cookies, White and Black
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焼いてる間の香りもいいですが、手順3の白っぽく持ったりしたバターにバニラエッセンス入れたあとの香りにも私は腰砕け。
アメリカ人って焼く前のクッキー生地とかパンケーキの生地とか平気で食べますよね。さすがにどうかと思います。
うわー!!食べたいです!!そして焼きたいですー!!
実は旦那さんの転勤に共ない日本に帰国してしまって、オーブンがない生活になってしまってます。
アメリカにいた頃は月に2,3回は焼いていたクッキーなのに・・・・
オーブンレンジの購入も考えてますが、部屋がせまいので小型のでフラストレーション溜めるぐらいなら
諦めて蒸し系を頑張ってみるのも手かな?とか悩ましぃ日々です。
いつか、アメリカンサイズのオーブンを完備した家を・・・旦那さん建ててくださぃ(苦笑)
私は日本の台所の魚焼き器が懐かしいですよー。
日本はガスが高いし、ターキーでも焼くのでなければ普通のオーブンレンジでたいていの料理は作れるかと。
こんにちは、チョコチップクッキーのレシピを追い求めて検索から参りました。
ヒラリー発言が悪訳だったとのこと、ビックリです!以前、やはりクッキー関係の記事でそちらの訳の引用を読んだものですから。思いがけず大変ためになる情報を得てしまいました、ありがとうございます。
掲載されているレシピも是非試してみたいとおもいます。食感と割合の参考も書かれていてありがたいです(*‘ω‘ *)ス●ラおばさんのみたいなチョコチップクッキーを目指しているのでそれも頑張ります。
通りがかりにて失礼いたしました。
うれしいコメントありがとうございます。
クッキーの食感と材料の割合についてとか、ちょっと時間をかけて調べてあれこれ書くことがあるのですが、お役に立ったというお声があるとほんとにうれしいです。次にアメリカンなスイーツのレシピをアップしますのでまたいらしてください~。
はじめまして。同じくNYC在住です。おからが食べたいと思って検索した時にこちらのサイトにたどり着きました。ひよこ豆豆腐、とっても美味しく作れました。ありがとうございました!
こちらのクッキーもぜひチャレンジしてみたいのですが、小麦粉はall-purpose flourかcake flourどちらを使ってらっしゃいますか?薄力粉(cake flour)が最寄りのスーパーで手に入らないので、、、。
コメントありがとうございます。
私はNYに来てからお菓子はほとんどall purposeで作っています。
シフォンとかスポンジケーキを作るときにはグルテンを減らすようにall purposeに5%-10%くらいのコーンスターチを混ぜて使っています。cake flour を使ってみたこともありますが、比較してもそんな差はないようにおもいました。プロのお菓子屋さんなら「ダメじゃん」というくらいの差があるのかもしれませんが、素人だしあまり細かいことに気がつくタチでもないの差がわかりませんでした。
しかし少なくともクッキーやブラウニー、パイ生地、タルト生地などカッチリした焼き菓子ではall purposeでまったく問題ありません。気軽にお試しください~。
早速丁寧にお返事くださってありがとうございました!
なるほど、all purpose flourで構わないんですね。早速作ってみたいと思います!
ゆうさん、初めまして
他の焼き菓子はレシピどおりに行くのに、どうしてもクッキーだけが苦手でしたが、今回このレシピで初めて成功!と思えるクッキーが焼けました!掲載ありがとうございます。
他のレシピも(主にクリスマス関連など、アメリカ育ちなので日本でおいしくターキーを焼きたく…)たのしく拝読して作っています。
どうしても初めてクッキーがうまくいった感動を伝えたくてコメントおじゃましました:) すこやかにお過ごしください。
なたりあさん、
レシピお試しありがとうございます。おいしくできたとのこと、私もうれしく思います。
またお気軽にコメントください、とても励まされます。